国際労働機関(ILO)の日本人専門家と懇談

7月18日(金)の午前中、私が国会議員になる前に8年余り勤務していた国際労働機関(ILO)で現在、活躍してくれている日本人専門家3名が国会事務所を尋ねてきてくれました。皆さん、休暇等で帰国中で、何かとお忙しい中だったのですが、私が事務局長を務めているILO活動推進議員連盟(以下、ILO議連)との交流と、日本の国会議員として活動しているかつての同僚を激励するという意味合いを兼ねて、わざわざ時間を割いて来てくれたのです。嬉しいですね!


(右から、小笠原さん、坂本さん、私、野口さん、そして駐日事務所の上村さん)

野口好恵さんは、私が1998年に初めてILO総会に出席して、第182号条約(最悪の形態の児童労働即時撤廃条約)の策定議論に関わったときに初めてお会いしているので、もう随分前からの知り合いです。長年、IPECという児童労働撲滅プログラムに関わってきておられるので、NTT労組をはじめ、児童労働問題に取り組んでいる日本の労働界にも知り合いはたくさんおられるはず。現在は、ジュネーブ本部で上級法務官として活躍されています。

坂本明子さんは、実は私と入れ違いで、ILOのマニラ事務所に赴任された方。私がいた頃、マニラ事務所はサブ地域事務所で、フィリピン、インドネシアに加え、フィジーやサモアなどの南太平洋諸島の国々も管轄していたのですが、その後の地域組織再編で、マニラ事務所はフィリピン事務所となり、フィリピン国内での活動に集中しています。かつては5人もいた日本人も、今は坂本さんだけ。今は長期休暇中とのことでしたが、マニラに戻ったらまた活躍してくれることと思います。

そして小笠原稔さんは、アフリカ・ケニアのナイロビ事務所を拠点に活動中です。お話しを聞いたら、もう5年以上、ケニアに駐在しておられるとか。しかも今、アフリカのILO関連事務所で日本人は小笠原さんだけなんだそうです。いや、そりゃビックリ。なかなか厳しい環境ではありますが、ぜひ小笠原さんには引き続き頑張っていただきたいですね。

私もお三方から久し振りにILOの状況をお聞きして、大変有意義でしたし、ILO勤務時代がとっても懐かしく感じられました。今後、ILO議連としても日本人スタッフの活動を支援していきたいと思いますし、何と言っても、日本人の数をもっと増やしていけるように応援していきたいと思います。我こそはと思っておられる方、ぜひどんどん手を挙げて下さいね!

ヤン・ニーセン博士と移民統合政策について意見交換

今日(7月4日)、来日中のヤン・ニーセン博士と民主党「多文化共生議連」役員との意見交換を行いました。テーマは「移民統合政策」です。

欧州では、2000年代以降、「移民統合」が各国の主要な政策課題となったため、その分析を行うための様々な指標が開発されてきたとのこと。その中で、二つの重要な指標があって、一つが「統合政策(法制度レベルでいかに移民統合が進展・確保されているか)」に関する指標として開発された『MIPEX』、もう一つが、統合政策の成果(実態としてどの程度、移民統合が進展・確保されているか)を計るためにEUとOECDがそれぞれ開発してきた「成果指標」です。

これらの指標を用いることで、各国において、国外からの移民がどれだけ、社会的・経済的・政治的な統合(差別解消)を確保されているかを計り、国際比較を行い、自国の政策の再検討・改善を図ることができるというわけです。 また、MIPEXと成果指標とのギャップを分析することで、政策と現実との乖離をあぶり出し、その解決策を検討することも可能とのことです。

今日、お話しを伺ったニーセン博士は、欧州のMigration Policy Group (MPG)の所長さん。MPGは、欧州を代表する移民政策のシンクタンク(ブリュッセル)だそうで、MIPEXを開発したのがこのMPGです。今日、ニーセン教授に同行していただいた明治大学の山脇教授らが、このMIPEXを使って日本の移民統合の状況についても分析をされていますが、現状、かなりお寒い結果。

まさにこの辺が、私たち多文化共生議連で問題意識を持って議論をしていく課題なので、今日はいい意見交換となりました。なお、英語のサイトですが、MIPEXについてはこちらに詳細が説明されていますのでご参照下さい。

「ILO活動推進議員連盟」2014年度第2回総会を開催!

今日、6月18日(水曜日)の朝、私が事務局長を務めている「ILO(国際労働機関)活動推進議員連盟」の今年度第2回目の総会を開催しました。通常国会最終盤で、各党とも多くの会合が重なって開催されていたにも関わらず、17名もの国会議員メンバーが参加してくれました。また、いつも通り、ILO政労使理事組織の皆さん、ILO駐日事務所やILO協議会の皆さんにも多数、ご参加をいただきました。

今日の総会では、まず、今年上半期の活動報告を行ったのち、協議事項として、役員体制案、下半期活動計画案を私から提案し、満場の拍手で確認・承認をいただきました。役員体制については、先の臨時総会で、川崎二郎衆議院議員(自民党、元・厚生労働大臣)に会長にご就任いただき、これまで会長を務めていただいた高村正彦衆議院議員(自民党、党副総裁)に顧問にご就任いただくことを決定しておりましたが、今回新たに、これまで空席となっていたみんなの党からの常任幹事ポストに、山田太郎参議院議員にご就任いただくことを承認いただきました。

続いて、5月28日から6月12日まで、スイス・ジュネーブで開催されていた第103回ILO総会の結果について、政府側理事である伊澤章厚生労働省総括審議官から概括的な報告をいただき、さらに連合及び経団連代表から、日本の労働代表及び使用者代表の立場から補足的な報告をしていただきました。

いくつか重要な報告があったのですが、中でも特に、おととしのILO総会で問題が発生して以降、正常化に向けて努力が続けられていた「条約・勧告適用委員会」の審議について、残念ながら今年も労使間の対立が解消されず、審議される予定の25案件のうち19案件について委員会としての結論を出すことが出来なかった点がもっとも重要な報告だったと思います。

この問題は、結社の自由に関するILO第87号条約に「ストライキ権の保障」が含まれるか否かについて、これまでILOの「条約・勧告適用専門家委員会」が「第87号条約第3条の規定から当然に含まれる」と解釈して運用してきたことに対して、使用者側が(なぜか今頃になって)異議を唱えたことに端を発しています。それによっておととしの委員会で労使が対立し、審議案件の合意が出来ずに史上初めて、委員会審議が出来ない事態に追い込まれたのです。そして今年も、使用者側がその主張を崩さず、残念な結果になってしまったようです。

報告では、労使がそれぞれの立場から背景や考え方の説明がありましたが、いずれにしろ、ILO条約の適正な適用を監視し、国際的な努力を行うために最も重要なメカニズムの一つである「総会の適用委員会」が機能不全に陥ってしまっていることは、ILOの三者構成主義そのものが危機に瀕していることを意味します。議連としても、この事態を重視し、今後、その動向を注視していくことを確認しました。

また、ILOのガイ・ライダー事務局長が、総会の基調報告の中で「移民労働」について特に言及し、「世界中で数億人存在するとされる移民は、労働市場において最も弱い立場にあり、ILOとしてもグローバル化に対応した政策を創っていくことが必要である」と提起したことについても報告がありました。今、政府の成長戦略の中に技能実習制度の拡充や家事労働の受け入れ等を含む外国人労働者の受け入れ拡大政策が提起をされていますが、当議連として「移民労働の問題」についてさらに深く掘り下げていくために、今後、勉強会等を開催していくことを確認し、閉会しました。

労働問題が山積している今だからこそ、ILO議連の存在意義が高まっていると思っています。今後もしっかり活動していきますので、応援宜しくお願いします!

民主党「多文化共生議連」第6回総会

6月18日(水)に、民主党「外国人の受け入れと多文化共生社会のあり方を考える議員連盟」の第6回総会を開催しました。今回は、現在、政府が検討を進めている外国人労働者受け入れ拡大措置の最新動向について、内閣府と内閣官房の担当者からヒアリングして、その中身を確認する作業が主な内容でした。

まず内閣府から、6月13日の政府「経済財政諮問会議」の資料を元に説明を受けましたが、最初に強く強調したのは「外国人材の活用は移民政策ではない」というフレーズ。これには我々一同、思わず失笑。なぜなら、①優秀な研究者などが活躍しやすい環境の整備、②技能実習制度に関し、国の関与の強化により適正化を図ること、③女性の外国人材の活用の検討を進めるなどの具体的施策を進めていく計画なわけですが、「優秀な人材が日本に留まって力を発揮してくれるように取り組む」と言っておきながら、それは移民政策とは関係ないというのは全く論理矛盾になってしまうからです。

続いて、内閣官房からは、6月16日の産業競争力会議の中で行われた外国人人材の活用議論について説明があり、①建設業に加え、造船業の分野でも外国人労働者の受け入れを検討していること、②外国人技能実習制度については、監理体制の強化、対象業種の拡大、実習期間の延長、受け入れ枠の拡大等が検討されていること、③女性の外国人労働者の家事業務、介護分野への活用の検討がされていること、等の説明がありました。内閣官房からの説明の中でも「この政策は移民政策と誤解をされないように配慮する」ことの説明があったことを付言しておきます。

参加いただいた議員の皆さんからは、各項目で具体的に突っ込んだ質問が次々と出されました。なにせ、ツッコミどころが満載だったので・・・。しかし、質問対応で参加してくれていた各省庁の担当者からは、「現在検討中で、詳細はこれから」との回答ばかり。まあ案の定ですが、「外国人労働者の受け入れを拡大する」という出口を決めたものの、ではどういう道筋でそれを実施するのか、具体的なことは何も決まっていないことを確認したわけです。

ということで、ヒアリング終了後、議連として今後の検討課題と方向性について議論を行いましたが、やはり「実習制度のなし崩し的拡大で、実質的な外国人労働者の受入を拡大していくことは許されない」という意見が大勢でした。しかし、「外国人労働者も正式に労働者として働いてもらえるような雇用制度の導入が必要である」という意見や、「併せて、日本としての移民政策を論議する必要がある」等の意見が出された一方で、「単純労働者の受入は、日本人労働者の雇用に影響を与えたり、労働条件を低位に固定化してしまう恐れなどもあり、慎重に考えるべき」という意見も出されました。

最後に中川正春会長から、外国人技能実習制度の適正化についての検討素案が提起され、今後、この検討素案をベースに論議を深めていくことを確認しました。また、技能実習制度に関する国内視察の実施、さらには韓国の外国人労働者雇用許可制度を勉強するために韓国への視察派遣を検討することを確認して、総会を終えました。

とにかく現政権は、なし崩し的に外国人労働者の拡大を進めようとしていますが、人権侵害として国際的な批判の強い実習制度の拡大は容認できません。まずは、実習制度を抜本的に改正して、本来の国際貢献と人材育成に特化させるべきですし、生活環境を保障するためにも多文化共生社会の構築に向けた議論を進めていくべきです。議連としても、今後、具体的な政策提言を準備していきます。

残業代ゼロ制度の問題点〜続き

6月1日付の当ブログ記事「どうしても『残業代ゼロ』を実現したいらしいが・・・」で、現在、政府の「産業競争力会議」で検討が進められている「残業代ゼロ制度」の問題点を指摘しました。その後も、民主党の厚生労働部門会議等で議論を進めているのですが、その中で政府が提出した資料や、われわれからの質問に対する回答に数々の疑問が出てきていますので、以下、続報としてお伝えしておきます。

安倍総理の記者会見

5月28日の第4回産業競争力会議の後、安倍総理は「新たな労働時間制度」に関して、以下のように述べたそうです:

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働き手の数に制約がある中で、日本人の意欲と能力を最大限に引き出し、生産性の高い働き方ができるかどうかに、成長戦略の成否がかかっていると思います。あわせて、少子高齢化が進む中、子育てや介護などと仕事とをどう両立するかは、大きな課題であり、社会の発想を変えねばならないと思います。そのためには、働き手が十分才能を発揮し、各人の事情に応じて柔軟に働き方を選べるように、働き方の選択肢を増やすことが重要であります。

 このため、成果で評価される自由な働き方にふさわしい、労働時間制度の新たな選択肢を示す必要があります。新たな選択肢については、「長時間労働を強いられる」あるいは「残業代がなくなって賃金が下がる」といった誤解もありますが、そのようなことは、絶対にあってはならないと考えます。まずは「働き過ぎ」防止のために法令遵守の取組強化を具体化することが、改革の前提となります。その上で、新たな選択肢は、

 1.希望しない人には、適用しない。
2.職務の範囲が明確で高い職業能力を持つ人材に、対象を絞り込む。
3.働き方の選択によって賃金が減ることの無いように適正な処遇を確保する。

 この3点の明確な前提の下に、検討していただきたいと思います。こうした限られた人以外の、時間で評価することがふさわしい、一般の勤労者の方々には、引き続き、現行の労働時間制度でしっかり頑張ってもらいたいと考えます。
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ここで安倍総理は、「長時間労働を強いられる」「残業代がなくなって賃金が下がる」ことがあってはならないと明言していますが、さて、一体、どういう意味での発言でしょうか???

働き過ぎ防止のための法令遵守の取り組み強化?

ここで言う法令遵守の取り組み強化というのは、労働基準監督署の体制強化のことを言っているようです。このこと自体は、私が初当選以降、ずっと国会質問で取り上げてきたことですので、大歓迎ですし、今回のことに関係なく今すぐ実行に移すべきです。

ただ、前回の記事でも指摘しましたが、本来、「働き過ぎ防止」を言うのであれば、まず現在の労働時間規制では事実上、青天井になっている労働時間について、(1)残業時間を含めた年間(及び週、月単位でも)総実労働時間の上限規制の導入、(2)勤務間インターバル(休息時間)規制の導入、(3)1週間に1日の絶対週休の導入、をセットで導入する必要があります。いくら取締体制を強化しようが、36協定の特別条項を結んで合法的に過労死レベル以上の残業時間を設定できる状態を温存しては、違反にならないのだから効果はありません。

まず何より、この労働時間の上限規制について明確な方向性が示されなければ、「改革の前提」条件は整わないのです。

さらに、もし今回の制度改革が、対象となる労働者を労働基準法の労働時間規制の適用除外にする(=基準法違反をしても罪に問われない)という措置だとすると、これまた取締体制の強化では何の対策にもなりません。だって適用が除外になっているわけですから、違反しても取り締まれないわけです(苦笑)

具体的な制度設計はまだ分かりませんが、もし労働基準法の労働時間規制を適用除外にするという話であれば、労働基準監督制度の枠外に置かれてしまう可能性がある、ということは留意しておく必要があると思います。

希望しない人には適用しない?

これも前回触れましたが、「新たな制度は労働者本人の選択制で、希望しない人は現行制度のママだから大丈夫」と言われると、何となく「それならいいか」と思ってしまうかも知れません。しかし、この新たな制度を選択するかしないかで、処遇や労働時間に全く何も差がつかないのであれば、そもそもこの制度を導入する意味がないわけで、経営側の並々ならぬ意欲を感じ取れば、当然に選択の有無で処遇格差を付けてくるはずです。

加えて、対象となる労働者は、

 

 

 

どうしても「残業代ゼロ」を実現したいらしいが・・・

いや、まあしつこいというか、執念深いというか・・・。

昨年、政府の産業競争力会議が雇用規制緩和の議論を始めたときに、「裁量労働制の適用拡大」がメニューに載せられていました。「第1次安倍政権の時に、ホワイトカラーエグゼンプションの導入に失敗したから、今回はさすがに懲りて、裁量労働制の拡大という戦術に転換したのだろうか?」と思っていたのです。しかも、去年はその後、解雇規制の緩和や国家戦略特区の議論に忙しくて、裁量労働制拡大の話も具体化して来なかったので、少し安心していたのですが・・・。

しかし・・・やっぱり諦めていなかった!!!

今年4月、再び、「労働時間改革」が産業競争力会議の議論の俎上に上ってきたのです。しかも今回は、ホワイトカラーエグゼンプションのスペシャル版。なんと、一定の条件下(労使合意と本人希望・同意)で、一般社員までもが対象になり得るような案だったのです。これじゃ「過労死促進法案だっ!」と批判すると、5月末の会合では一部修正した案が示されたのですが、これがまた酷い内容・・・。呆れてモノが言えないとはこのことですが、来年の通常国会に法案提出予定なんて言っているので、今から声を上げて、断固、阻止していかなくてはいけません。

現行の労働時間規制

まず、ごく簡単に、現行の労働時間規制のおさらいをしておきましょう。

労働基準法では、1日8時間、週40時間という法定労働時間を定めています。しかし、労使の合意があれば、一定の条件下で、法定労働時間以上の残業や休日出勤を行うことができます。そして、法定労働時間以上の時間外労働部分については、割増賃金が支払われなければなりません。

言ってみれば、労使合意をして、残業代さえ支払えば、いくらでも残業をさせることが出来るというのが現行制度なのです(=実は、これが労働時間問題の本質なのです)。

ところで、この労働時間規制、会社の役員は対象外ですし、部長や課長など、管理監督者についても適用除外になっているのはご承知の通り。さらに、「みなし労働時間制」というのがあって、その中で「専門業務型」と「企画業務型」の二つの『裁量労働制』が規定されています。一定の条件下ではありますが、その対象になれば、管理監督者以外の社員でも労働時間規制の適用外(実際の残業時間ではなく、みなしの残業時間で賃金計算)になります。ただし、これはあくまで労働時間規制の枠内で、労使の合意によって一定時間を残業したとみなすもの。労使の合意や労基署への届出が必要ですし、法定時間以上の残業時間相当分や、深夜や休日の労働時間については割増賃金の対象になるというのがポイントです。

産業競争力会議で示された案

5月末の産業競争力会議で示された修正案、提案したのは産業競争力会議の「雇用・人材分科会」で主査を務める長谷川閑史氏(武田薬品工業社長、経済同友会代表幹事)ですが、実際にこの案を作ったのは経済産業省の官僚という話も聞こえています。産業界の意向を最大限に反映した制度にするために頑張ってるのでしょうかね(苦笑)

「一般社員まで残業代ゼロにするのか!?」と批判された4月の案を一部修正して、「全ての労働者が対象ではなく、限定された労働者に導入する」ことを強調していますが、まさに突っ込みどころ満載です。まあ、本来、自分の裁量で成果や労働時間など決められない一般労働者に、労働時間規制の適用を除外にして「完全成果主義」を導入し、残業代なしで(成果を達成するまで)いくらでも働かせられるようにしようというのですから、まっとうな議論は成り立たないことは当然ですが・・・(大苦笑)

以下、いくつかポイントを示しておきます。

(1)対象が曖昧!

 まず、制度案は「限定導入」であることを強調していますが、実際は、具体的に誰が対象になるのかは明確にされていません。「職務経験が浅い、定型・補助・現業的業務など自己裁量が低い業務に従事する社員は対象外」とする一方で、「(a)中核的、専門的部門等の業務、(b)一定の専門能力・実績がある人材、(c)将来の幹部候補生や中核人材等が対象」としていて、結局は、経営側が後者に該当すると判断されれば幅広く対象となる危険性があります。

 ちなみに、(c)の将来の幹部候補生や中核人材等なんていうのは、企業によっては相当数の若手一般社員も対象になり得るのではないでしょうかね? だって社長さんたち、新入社員に「将来はうちの会社を背負って立つ人間になってくれ」って言うでしょ?(苦笑)

(2)本人の希望・選択なんてまやかし!

 制度の適用は「労働者本人の希望・選択」に基づくことになっています。これ、もっともらしく聞こえますが、当然、経営側は、半ば強制的に同意を求めてくるでしょう。さらには、選択の有無で、その後の昇進、昇格、昇給に差を付けてくることが容易に想定されます。

 だって、そもそも、対象となるのは「能力のある人材」とか「幹部候補」とかなんですよね? であれば、むしろ処遇に差が付くのが当然とも考えられます。そうなると、それを拒否できる若手社員がどれだけいるでしょうか? 断るというこは、「自分は無能で、一生ヒラでいい」と宣言するようなものじゃないですか? 実際、いったん断ったらその後ずっと干された、なんてことが起こっちゃうんだと思います。

(3)ブラックユニオンを奨励!?

 制度案によれば、導入は原則、過半数組合をもつ企業に限定するとしています。何だかとってもうさん臭い部分です(苦笑) これも一見、いいように見えますが、もし本当にそういう制度になった場合、どういうことが起こるでしょうか? 例えば、どうしても導入したい経営者が、いわゆる御用組合を結成して、強制的に労使合意をさせてしまうことも考えられます。先日ある会合で、連合の方が「ブラックユニオン奨励法案だ」と非難されていましたが、その危険性もあるのではないでしょうか。あっ、これ、昔で言う「イエローユニオン」ですかね。

 また、結局は、過半数の従業員代表との合意でもOKになってしまうのではないかと思いますが、そうなれば全く実効性ある歯止めにならないことは、残念ながら現行法の枠内でも証明されてしまっていますね。

(4)効率的に短時間で働いて報酬確保!なんて経営者がやる気になれば今でも可能!

 恐らく何が何でも「労働者にとって素晴らしい案だ」ということを示したいのでしょうが、制度案は、導入すれば「職務・成果に応じた適正な報酬確保」とか、「効率的に短時間で働いて、報酬を確保できる」とか、そのメリットを一生懸命に強調しています。

 しかし、 ここには大きな矛盾があります。大体、明確な成果とその対価、そしてそれに通常必要な労働量をどう適正に計量するのでしょうか? それが可能な一般労働者なんて、一体、どれだけいるのでしょうか? さらに言えば、それが可能だとすれば、それをなぜ、現行制度の枠内(裁量労働制やフレックスタイム制)でやろうとしないのでしょうか?

 大体、効率的に短時間で働くなんていうことは、経営者がその気になれば、現行の労働時間規制の枠内でいくらでも労使間で決めて実行出来る話です。先ほど確認したように、労働基準法というのは労働時間の上限に一定の歯止めをかけ、割増賃金の支払などを定めていますが、下限を定めているわけではないのです。規制の枠内で、労使が協議して所定内労働時間を定め、処遇を定めるわけですから、所定内労働時間以内で成果を達成したら、その分、残りの勤務時間は遊んでいていい、なんてことはやろうと思えばすぐできます。そうしないところが、まさに虚構なわけです。

(5)長時間・過重労働の防止・・・それが一番重要だ!!

 極めつけは、制度案が「健康確保のため、『労働時間上限』『年休取得下限』などの量的制限の導入」を謳っている点です。「なんだ、分かっているじゃないか!」と感心しちゃいけません。だって、謳っているだけで、何ら具体的な提案はしていませんし、一番最後にいかにもとってつけたように書かれているんです。本当はこれが一番、今、やらなきゃいけないことなのに!!!

 繰り返しますが、現行法の下では、労使合意さえ結べば、労働時間はほぼ青天井です。ちゃんとした労働組合がない職場では、過半数労働者の合意なんてほとんど形骸化してますから、中には経営者が勝手にとんでもない残業時間を労基署に登録している職場もあるんじゃないかと思います。だから、過重労働がなくならないし、過労死や精神疾患が蔓延しているし、仕事と家庭との両立が難しいし、女性が働き続けるのが難しいんです。

 つまり、今必要なのは、まず、年間総実労働時間に法的な上限を設けること。それ以上は、残業も休日も含めて決して働かせてはいけないということを決めることです。その上で、一日の勤務の終わりと次の日の勤務開始との間に、一定時間以上の休息時間を設ける「勤務間インターバル規制」を導入すること。さらに、絶対週休日を確保すること。現状は、変形休日制の下で月に4日、休日を与えればいいことになっていますが、それを7日に1日は絶対に休日を設けることをルールとして決めるんです。

 労働時間規制というのは、働く者の命と、健康と、生活を守るためにあるべきものなんです。そしてそれは、本来、経営者だって管理監督者だって同じであるはず。全ての働く者のために、これ以上働いちゃいけないっていう規制は設けるべきなんです。

 そういう最低限のことをちゃんとやった上で、その枠内で、労働者の働き方や希望に応じた裁量的な働き方が検討されるのはやぶさかではありませんが、今、政府がやろうとしていることは、順番が違うというか、全く真逆の案。つまり、労働者のためにやろうとしているのではなく、企業の都合のためにやろうとしていることが見え見えなのです。

今後の展開

以上のポイントをまとめると、(1)今、やるべきは、労働時間規制を強化することで、それをやらないままに労働時間規制の適用除外を一般労働者に拡大したら大変なことになる、(2)限定導入などと言って、はなから全然限定になりそうもないし、一旦導入されれば、将来的に対象が拡大されるのは目に見えている、(3)結局は、残業代(そして労働コスト)を抑制したい(一部の?)企業経営者のために労働者を犠牲にしようとしているに過ぎない、ということになるでしょうか。

今後、6月にも公表される予定の成長戦略第二弾に、この「労働時間改革」なるものが書き込まれる予定とのこと。その方向性に基づいて、労働政策審議会で具体的な制度設定議論が行われ、来年の通常国会にも労働基準法改正案が提出される運びとなるのでしょう。最終的に国会での勝負になれば、与党がまた数の力で強引に成立を図ることも予想されます。まずは何と言っても、6月から年末までが最初の勝負になるでしょうから、ぜひ連携して取り組んでいきましょう。

それにしても、解雇規制の緩和、労働時間規制の緩和、派遣労働の緩和、有期雇用規制の緩和、外国人単純労働者の受け入れ規制の緩和などなど、次から次へとよくもまあ出してくるものです。これらが全部実現した時、一体、どんな労働環境になっているのでしょうか? その悪影響を最も強く受けるのは、これから社会に出る若者や女性など、弱い立場の労働者です。働く者の安心を守るためにも、断固、闘っていかないといけませんね!

民主党「多文化共生議連総会」で韓国の「外国人雇用許可制度」を学習

5月26日午後、私が事務局長を務めている民主党「外国人の受け入れと多文化共生社会のあり方を考える議員連盟(多文化共生議連)」の総会を開催しました。

今回の議題は、主に二つ。まず、諸外国がどのように外国人労働者を受け入れているのか、その受け入れ状況や制度、処遇のあり方や生活支援について、国立国会図書館に調査を依頼していたのですが、その中間的な結果が出来上がってきたので、担当者より説明を受けました。

続いて、中央大学兼任講師の宣元鍚(ソンウォンソク)氏より、韓国の非熟練外国人労働者受け入れ政策(労働許可制度)について解説いただきました。韓国では、日本が実施している技能実習制度に習い、外国人研修生の受け入れを実施していたものの、(1)非正規滞在者の増加、(2)不適切事例の多発(人権問題等)、(3)政策機能の低下等の問題が生じたため、早々と「雇用許可制度」という新たな制度を導入して、外国人単純労働者の受け入れを公式に実施することになったとのことです。

受け入れにあたっては、国内労働市場の補完性を担保するため(つまり、韓国人労働者の雇用を奪うことのないよう)に、「労働市場テスト」(企業が求人募集して、1週間以内に国内労働者から求職があるかどうかを確認してから外国人労働者受け入れの許可を決定)、「総量規制」(政府が毎年の外国人労働者受け入れ総数の上限を設定)、「雇用率」(産業別・企業規模により外国人労働者比率に制限を設定)等を決めています。また、労働者の権利を保護するために、差別禁止や労働法の適用を徹底し、定住化を防ぐために滞在期間を最長4年10ヶ月とする等の基本原則を適用して受け入れを行っているようです。

さらに、運用体制については、出入管理法で在留資格に「非専門就業」を設定。また、外国人労働者の就業・雇用管理をするための「外国人勤労者の雇用等に関する法律」を制定し、政府が主体的に需給調整する等、政府主導で需給スステムを確立するとともに、送り出し側の国の責任も明確にするように、送り出し国とMOUを締結して運用を行っているとのことでした。

当議連としては、引き続き、現行の外国人技能実習制度の問題点を洗い出しながら、韓国をはじめとする諸外国の制度事例を調査し、将来的な制度のあり方を検討していきます。

民主党「多文化共生議連総会」で韓国の「外国人雇用許可制度」を学習

 

5月26日午後、私が事務局長を務めている民主党「外国人の受け入れと多文化共生社会のあり方を考える議員連盟(多文化共生議連)」の総会を開催しました。

 

今回の議題は、主に二つ。まず、諸外国がどのように外国人労働者を受け入れているのか、その受け入れ状況や制度、処遇のあり方や生活支援について、国立国会図書館に調査を依頼していたのですが、その中間的な結果が出来上がってきたので、担当者より説明を受けました。

 

続いて、中央大学兼任講師の宣元鍚(ソンウォンソク)氏より、韓国の非熟練外国人労働者受け入れ政策(労働許可制度)について解説いただきました。韓国では、日本が実施している技能実習制度に習い、外国人研修生の受け入れを実施していたものの、(1)非正規滞在者の増加、(2)不適切事例の多発(人権問題等)、(3)政策機能の低下等の問題が生じたため、早々と「雇用許可制度」という新たな制度を導入して、外国人単純労働者の受け入れを公式に実施することになったとのことです。

 

受け入れにあたっては、国内労働市場の補完性を担保するため(つまり、韓国人労働者の雇用を奪うことのないよう)に、「労働市場テスト」(企業が求人募集して、1週間以内に国内労働者から求職があるかどうかを確認してから外国人労働者受け入れの許可を決定)、「総量規制」(政府が毎年の外国人労働者受け入れ総数の上限を設定)、「雇用率」(産業別・企業規模により外国人労働者比率に制限を設定)等を決めています。また、労働者の権利を保護するために、差別禁止や労働法の適用を徹底し、定住化を防ぐために滞在期間を最長4年10ヶ月とする等の基本原則を適用して受け入れを行っているようです。

 

さらに、運用体制については、出入管理法で在留資格に「非専門就業」を設定。また、外国人労働者の就業・雇用管理をするための「外国人勤労者の雇用等に関する法律」を制定し、政府が主体的に需給調整する等、政府主導で需給スステムを確立するとともに、送り出し側の国の責任も明確にするように、送り出し国とMOUを締結して運用を行っているとのことでした。

 

当議連としては、引き続き、現行の外国人技能実習制度の問題点を洗い出しながら、韓国をはじめとする諸外国の制度事例を調査し、将来的な制度のあり方を検討していきます。

 

 

ILO議連の臨時総会&第2回勉強会を開催!

 

今日、5月22日(木)、私が事務局長を務めている「ILO活動推進議員連盟」の臨時総会と、今年度第2回目の勉強会を開催しました。

 

開会後、まず、会長人事の提案、承認のための臨時総会を実施。実は、これまで議連の会長を務めていただいていた自民党の高村正彦衆議院議員が、自民党副総裁としての業務があまりに多忙になり、議連の活動に迷惑をかけたくないということで交代。新たに、元厚生労働大臣の、川崎二郎・自民党衆議院議員に会長に就任いただくことになりました。

 

満場の拍手で会長に就任された川崎新会長は、長らく自民党の労働問題調査会の会長を務めてきた経験を生かし、ILOが取り組む諸課題にしっかり対応していきたいと決意を述べられました。

 

続いて開催した勉強会では、来たる5月28日(水)から6月12日(木)まで開催される第103回ILO総会(スイス・ジュネーブ)の議題と主なポイントについて議論。まず、政府側理事である伊澤章・厚生労働省総括審議官(国際担当)より総括的なご説明をいただいた後、労働側理事の桜田・連合国際顧問、使用者側理事の松井・経団連国際副本部長より、それぞれ、総会に臨む態度についてご説明をいただきました。

 

今度の総会では、常任委員会の他、3つの特別委員会が開催されます:(1)1930年の強制労働条約(第29号)の補完に関する委員会、(2)インフォーマル経済からフォーマル経済への移行促進に関する委員会、(3)雇用に関する委員会、です。(1)については、中核条約である第29号条約について、時代に合わなくなっている規定の改廃を行い、それを拘束性のある議定書か、拘束性のない勧告のいずれかの形で規定しようというもので、今年の総会で結論を得るとのことです。また、(2)については、新たな勧告の採択をめざし、今年1次討議を行って、来年の総会で結論を得る方向という説明でした。

 

なお、2012年の総会で、史上初めて労使が合意できずに審議が吹き飛んだ条約・勧告適用委員会については、2年経った今でもその余波を引きずっているようではありますが、今、労使の代表組織間で審査案件のリストアップ作業が続いているとのこと。ひょっとすると、日本案件で81号条約(労働基準監督)が審議リストに入るかも知れないとのことですが、これについては最終的な決定を待ちたいと思います。

 

なお、ILO総会の結果については、今通常国会中に議連会合を開催して報告をいただき、フォローしていくこととしました。以上、今日の議連会合のご報告です!