9月30日(水)午後、標記会議が開催され、「ドイツの労働市場改革の成果~ハルツ法改革10年」というテーマで立正大学法学部の高橋賢司 准教授よりご講演をいだだきました。

主な内容は以下のとおりです。

1)ハルツ法制定の経緯

2000年代の初め、ドイツは経済成長や失業率の面で主要国と比較してあまり成果が上がらない状況にあった。そこで、連邦雇用庁の改革と企業・労働組合・学界・政界の代表者で構成されるハルツ委員会を発足させ、3年間で400万人の失業者を200万人に削減するための4つの法案からなるハルツ法を制定した。

2)ハルツ法の主な内容

①派遣期間の撤廃や同一賃金原則、人材サービスエージェンシー(PSA)の設置等派遣法の規制緩和 ②教育訓練クーポンの導入や中高年に対する補助金の創設等失業保険法改革 ③個人創業助成金による自立強化 ④月400ユーロまで労働者の所得税と社会保険料が免除されるミニジョブの創設 ⑤連邦雇用エイジェンシーの発足 ⑥失業保険の給付期間の制限 ⑦失業扶助と社会扶助の一部を統合した基礎保障制度を導入

3)ハルツ法の評価

①最大の目的だった失業率は低下し、長期失業者も減少した。ただし、ハルツ法の効果とみるか輸出の好調により景気が持ち直したためとみるかは評価がわかれる

②確かに仕事には就いたが、ワーキングプアが増加し十分生活できない層が拡大した。ミニジョブも確かに労働者の負担は減るが、本来使用者が従業員が食べていけるだけの賃金を保障せずに国が肩代わりする形となり、国の財政負担が増え保険料を基礎とする社会保障制度を長期的には弱体化させることになる

4)ドイツの再改革(うすい雇用の修正)

①2015年1月より原則8.5ユーロとする最低賃金を施行 ②期間無制限の派遣を禁止し、最大で18か月までとする派遣法の再規制の導入

5)日本へ示唆するもの

①ミニジョブや派遣の規制緩和は、更なる貧困を招き、特に最低賃金が不十分な場合には、ワ-キング・プアが起こりうる。

②ドイツと比べて日本の雇用保険+職業訓練給付金の支給期間が短く、雇用保険と生活保護の中間を拡充させる必要がある。

③長期的にみれば、派遣の再規制(一時的な労働に適合した制限的な派遣期間、平等取扱原則)、最低賃金・求職者支援の拡充が日本でも不可欠。

 

引き続き、日雇い派遣の規制緩和について厚生労働者よりヒアリングを行い、最後に山井座長の方から、「ドイツでも派遣法の規制緩和を見直して期間上限を導入しようとしているのに、我が国では全く逆の派遣法が今日施行されてしまった。日雇い派遣の年収要件も引き下げが検討されていてとんでもない話だ。ハローワークに今日から正社員より派遣の求人がどっと増えることになるのではないかと大変心配している。来月、民主党の共生社会本部としてドイツにハルツ法を含む労働市場改革の実態の視察に行ってくるので、今後の民主党の労働政策に生かしていきたい」とのまとめのあいさつで閉会となりました。  (報告者 田中秘書)