3月3日(火曜日)の朝8時より、超党派の国会議員で構成する「ILO活動推進議員連盟」の今年度第1回目の勉強会を開催しました。

 

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今回は、今年の1月から新たに国際労働機関(ILO)アジア太平洋地域総局長に就任された西本伴子氏と、12月まで総局長として奮闘された前任の浦元義照氏をお招きし、アジア太平洋地域におけるILO活動の現状と課題、今年の重点事項等についてお話しをいただき、全体で意見交換を行いました。

西本総局長からは、(1)アジア太平洋地域総局は、ILO加盟34か国、人口にして37億人をカバーするILOでも最大地域を所管する組織であって、その役割は非常に大きいこと、(2)経済成長はめざましいが、ILO条約の批准率が低く、その批准と適切な適用促進が必要であること、(3)とりわけ、移民問題や子ども・ジェンダーといった基本的人権にかかわる問題の改善、質の高い雇用(ディーセントワーク)の確保、労使関係の育成等が重要課題であり、ILOとしてそのための技術協力の強化に努めているとの説明がありました。

 

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ちなみに西本総局長は、長年にわたって国連の専門機関で活躍されてきた方で、人間・社会開発にかかわる分野で幅広い活動をされてきています。ご本人も、決意表明の中で、「これまで培ってきた経験を総合的に活かしていく、ベストな役割を与えて頂いたと思う。国際労働基準の促進やディーセントワークの実現によるILOのミッションの達成に向けて頑張りたいと」述べておられました。今後のご活躍を応援したいと思います。

また、浦元前総局長からは、約2年にわたる総局長としての活動を踏まえ、(1)アジア太平洋地域は世界のGDPの6割を占めており、とりわけ本年のASEAN経済統合が実現すると6億人規模の市場が誕生することになること、(2)これまでは、安価な労働力と輸出に依存したモデルで経済成長を遂げてきたが、今後、持続可能な経済成長モデルに移行するためには、安定した雇用と良好な労使関係の構築、労働条件の改善と購買力向上に基づく新しい成長モデルが必要で、そのための環境整備や労働者に対する技術訓練等についてILOとしても積極的に支援していく必要があること、等についてお話しをいただきました。

質疑・意見交換では、出席議員からさまざまな質問やコメントが出されたのですが、とりわけ、ILOへの日本人役職員を増やすことの重要性や、そのための具体的な方策について活発なやりとりが交わされました。現状、ILOで活躍する日本人役職員は30人台にとどまっています。拠出金の規模・割合から言えば2倍から3倍の数がいてもよく、この間にも日本人の採用増に向けた努力も行われてきたのですが、残念ながら成果につながっていません。若手職員の増加も課題なのですが、幹部クラスの増員も必要です。例えば現在、幹部レベル(D2、D1)には数人しかおらず、D2は一人もいない状況です。

 

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質疑の中では、公務員の国際機関への出向期間の延長(現行は3年)や、いつでも公務員として戻ってこられる仕組み、年金等を通算して持ち歩けるようにする制度改善、子どものころから人権教育や援助教育を行って海外に関心を持ってもらう必要性、一定数の幹部ポストを国としても戦略的に獲得していく方針の確立、労使も積極的に人材を輩出する協力を行っていく必要性など、具体的な提案が出されました。この点、今後、議連としても積極的に応援していきたいと考えています。