皆さんもニュースなどでご覧になったでしょうか? 昨晩の安倍総理記者会見。来年10月に予定されていた消費税の10%への引き上げを1年半、先送りすること、そして、その決定について信を問うため、11月21日に衆議院を解散すること、を発表したわけです。
これを受けて、私たち民主党は、今日の本会議で与野党が合意していた重要法案について成立を図ることに協力したのち、これ以上の一切の審議に応じないことを決定しました。与党は、国会終盤の大変重要な時に勝手に解散を決めておきながら、自分たちに都合のいい法案だけ成立を図るために21日解散を選択したようですが、そんなふざけた話はありません。
しかし、昨日の記者会見での説明も、全くおかしな話でしたね。だってそもそも、消費税の引き上げを定めた消費増税法には、景気が想定以上に悪くなれば増税を先送りなどできる「景気条項」があるわけです。現下の経済状況で、来年、消費税を引き上げる状況にないとするならば、景気条項に基づいてその判断を行い、改正法案を用意して国会で議論するとともに、景気回復に向けて全力を傾注するのが筋なのではないのでしょうか? なにゆえ、700億円ものお金をかけてこのタイミングで解散しなければならないのでしょうか?
まして、安倍総理はこの2年間、アベノミクスは絶対に成功する、成功していると言い続けてきたんじゃないのでしょうか? アベノミクスは成功している、株価は上がっている、企業業績は大幅に改善している、雇用は良くなっている、国民の暮らしも良くなっている —— ではなぜ景気がこんなにも落ち込んでいるのでしょう? 先日発表された、7月〜9月期のGDP成長率速報値が、多くの専門家のプラス成長予想に反し、0.4%のマイナス(年率換算で1.6%のマイナス)を記録し、2期連続のマイナスとなった(=景気後退期に入った)のは、まさにアベノミクスが失敗した証左なのではないのでしょうか?
昨年来、政治学習会等で私の講演を聞いて頂いた皆さんは、すでに昨年の早い段階から私が「アベノミクスかアベノリスクか?」と疑問を投げかけ、(1)異次元の金融緩和は金融市場をむしろ不安定にする恐れがあり、かつ円安がコストプッシュ型のインフレを招くと国民生活を直撃すること、(2)大胆な財政出動も伝統的な公共事業のバラマキでは乗数効果が期待できず、借金を積み上げるだけに終わってしまう懸念が強いこと、そして、(3)労働者や生活者の犠牲の上に企業業績だけを上昇させるような成長戦略では絶対に成功しないこと、を訴えていたことを思い出していただけると思います。
特に、三番目の点は大変重要です。安倍政権は、昨年の早い段階から、労働者保護ルールの規制緩和の議論に着手し、次々と改悪法案を国会に提出してきました。また、社会保障制度についても、もともと消費税引き上げの増収分を社会保障の維持・拡充に全額充てると国民に約束していたにもかかわらず、社会保障改革プログラム法や医療・介護改革一括法など、給付の削減と負担増ばかりを強いるような中身の法案を強行採決で成立させてきました。「企業が世界一、活動しやすい国を創るのが私の成長戦略だ」と言って憚らない安倍総理ですが、労働者や生活者の犠牲の上に企業の成長などあるわけありませんし、社会の発展なんか実現できるわけがありません。
安倍政権になって以降、正規雇用は減り、非正規雇用が増え続けています。労働者の実質賃金は、今や15ヶ月連続でマイナスです。15ヶ月連続ということは、前年比マイナスだった一年前よりさらにマイナスになっているということですから、労働者の実質生活は相当に痛んできているということになるわけです。そして大事なことは、平均でマイナスを記録しているということは、過半数ぐらいの労働者は平均以上、つまり相当大きなマイナスになっているということです。これで、どうして持続可能な景気回復など実現できるでしょうか?
結局、アベノミクス(アベノリスク)は、金融資産を保有しているお金持ちをさらに裕福にしてあげたに過ぎません。そして最悪なのは、そのことを安倍総理自身が直視しておらず、失敗を認めようとしていないことです。今回の解散は、アベノミクスの失敗を隠し、自民党の政治とカネの問題を隠蔽し、集団的自衛権の行使容認問題を覆い隠し、来年迎える自民党総裁選で自らの再選を果たして長期政権を築き上げるための解散、つまり、「安倍総理の、安倍総理による、安倍総理のための解散」に他なりません。
来たる衆議院選挙、もし安倍政権が勝利すれば、安倍政治の継続を容認してしまうことになってしまいます。それはつまり、一部の大企業(特に人材ビジネス業界大手?)の成長とお金持ちのさらなる資産形成ために、労働者保護ルールを改悪して非正規・不安定雇用を増やし、社会保障の改悪を進めていくことを容認してしまうことに他なりませんし、特定秘密保護法の施行や集団的自衛権の行使容認をこのまま進めさせてしまうことに他なりません。
今回の、このまったく大義なき解散を、むしろ「安倍政治にノー」を突きつけるチャンスとして捉え、有権者の皆さんに賢明なご判断をいただけるよう、私たちとしてしっかりと闘っていく決意です。