8月6日(木)夕刻、厚生労働省の大臣室において、私が事務局長を務めている超党派「非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を考える議員連盟」から塩崎厚生労働大臣に対して、『平成28年度予算概算要求及び税制改正要望に向けた緊急提言』を手交しました。
申し入れに参加したのは、尾辻会長(自民党)をはじめとする議連メンバー8名です。このブログでも随時、紹介してきましたが、昨年秋に議連を設立し、今年度 に入ってから、有識者を招いた勉強会を開催してきたました。その過程で、ぜひ勉強会の成果を踏まえて政府の来年度予算編成および税制改正作業に具体的な要望を提出しようということになり、7月30日に議連役員会で提言案を取りまとめ、8月5日の議連総会で最終決定したのが、この日大臣に申し入れした提言です。
下段に全文を掲載しておきますので、ぜひご一読下さい!
日頃、厚生労働委員会では徹底的にやり合っている塩崎大臣ですが、この日は超党派議連からの申し入れということもあってか、大変神妙な面持ち。かつ、私たちの提言の各項目について、大変丁寧にご所見をいただきました。とりわけ、「不本意非正規社員ゼロ&学卒全員正社員就職実現キャンペーン(仮称)」の全国展開や、給付型奨学金の創設、非正規雇用労働者の雇用の実態に関する調査・研究の実施の3点については、大臣から想定以上に前向きな回答を頂くことができました。「非正規雇用労働者が増えることを良いと思っているわけではない。賃金格差も広がっていて、対策が必要だと考えている。提言をいただいた、給付型の奨学金の創設を含む一人親世帯への支援や、調査研究の充実など、関係省庁との調整も含めて事務方にしっかり検討させたい」との大臣答弁、しかと受け止めました。
今後、概算要求から予算編成議論が本格化していきますので、議連としても厚生労働大臣の具体的な取り組みをフォローしていきます。
なお、大臣申し入れ後、厚生労働省記者クラブで、「非正規雇用対策議連」として記者会見を行い、緊急提言の内容と大臣とのやりとりについて説明しました。結局、あまり報道されなかったのは残念至極でしたが・・・。
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「非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を考える議員連盟」
平成28年度予算概算要求及び税制改正要望に向けた緊急提言
〜非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活への第一歩実現に向けて〜
( ダウンロード:H28年度概算要求に向けた緊急提言案 2015.08.06版)
Ⅰ.提言の背景
我が国では、雇用全体に占める非正規雇用の割合が4割近くにまで拡大し、中でも、非自発的な「不本意非正社員」の増加と、がんばって働きながらも生活苦に喘ぐ「ワーキングプア層」の拡大が社会的な課題になっている。特に、新たに社会に出る若者たちの約半数が非正規雇用労働者として職業人生のスタートを切ることを余儀なくされ、その多くが、低賃金かつ不安定な雇用環境の中で将来に希望を持てずに生活している状況は、我が国における閉塞感の蔓延と社会の活力の低下や、少子化に伴う社会保障制度の不安定化を招き、何より、日本社会の未来を担う貴重な人的資源の損失にもつながっており、早急に改善・打開を図っていく必要がある。
このような観点から、私たち超党派国会議員で構成する議員連盟は、政府及び関係省庁に対し、平成28年度予算概算要求及び税制改正要望に下記の具体的事項を盛り込むことを提言する。
Ⅱ.具体的提言事項
- 平成28年度政府予算編成の最優先課題の一つに「非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活の実現」を位置づけ、とりわけ、これから社会に出る若者たちが職業生活のスタートを正規社員として迎えることが出来る『学卒全員正社員就職の実現』を目標に掲げ、具体的施策を講じること。
- 「正社員転換・待遇改善実現プラン」を策定し、実行すること
- 厚生労働大臣を本部長として、厚生労働省内に「正社員転換・待遇改善実現本部(仮称)」を設置し、非正規雇用労働者の①正社員転換と②待遇改善について、国全体としての目標値や期限、実施されるべき具体的施策を定めた「正社員転換・待遇改善実現プラン(仮称)」を策定し、実行すること。
- 併せて都道府県労働局に、労働局長を本部長とする「正社員転換・待遇改善実現(都道府県)本部(仮称)」を設置し、本部が策定した実現プランを踏まえ、当該地方自治体とも連携して、それぞれの地域の実状を踏まえた「地域プラン(地域計画)(仮称)」を策定し、実行すること。
- 加えて、「不本意非正規社員ゼロ&学卒全員正社員就職実現キャンペーン(仮称)」を策定し、全国展開を図ること。
- なお、実現プラン及びキャンペーンの策定においては、主要な労使団体とも協力し、①最低賃金水準の引き上げ、②社会保険の適用拡大、③労働法令遵守の徹底及びブラック企業対策の強化、④均等待遇(不合理な労働条件差別の禁止)の推進、⑤仕事と家庭生活の調和(ワークライフバランス)の確保などを最大限考慮し、具体的施策を講じること。
- 優良事業主に対する支援策の拡充を行うこと
- 非正規雇用労働者の①正社員転換、②待遇改善、③教育訓練施策に積極的に取り組み、かつ実績を上げている事業主(優良事業主)に対して、以下の支援策を講じること:
(1)既存の助成金制度(キャリアアップ助成金、職場定着支援助成金等)の拡充や新たな助成制度の創設
(2)既存の税制優遇措置(雇用促進税制や所得拡大促進税制)の拡充や新たな優遇措置の新設
(3)社会保険料補助制度(中小零細企業への企業負担分補助等)の新設
- 非正規雇用労働者に対する支援策を拡充・新設すること
(1)一定所得水準以下の一人親世帯への緊急生活支援策を講ずること:
① 児童扶養手当の拡充(満額支給の所得制限の引き上げ、多子加算の増額等)
② 就学援助制度及び高等学校等就学支援金の拡充(補助額の上乗せ、補助対象費目の拡充、等)。併せて、児童養護施設への国庫補助拡大も検討。
③ 給付型奨学金の創設及び無利子型奨学金の拡充。
④ 住宅(家賃)補助制度の創設・拡充、など。
(2)非正規雇用労働者でかつ奨学金返済困難者に対する緊急支援策を講ずること:
① 奨学金利子の減免措置
② 返済の充当順位の変更(元本優先返済)
③ 所得連動型返済への切り替え、など。
- 公共調達における優良事業主への優遇措置を創設すること
- 国(中央省庁、独立行政法人等)及び地方公共団体が実施する公共調達(公契約)において、優良事業主に対する優遇措置(優先調達等)を講ずる。
- 非正規雇用労働者の雇用の実態に関する調査・研究を実施すること
- 非正規雇用労働者の雇用実態(雇用形態別の賃金、労働条件、休日・休暇・休業、一時金・退職金、昇進・昇級・昇格、勤続年数、昇給・手当、福利厚生、教育・訓練、パワハラ・セクハラ・マタハラ、法令違反などの実状。公務・公共サービス関連の職場における雇用実態も対象に含むこと)に関する調査研究を行う。
(以上)
【参考】
「非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を考える議員連盟」
議連目標の達成に向けた中長期的政策検討課題(素案)
1.労働憲章(仮称)の制定・決議
⇨我が国における雇用(働き方)の基本原則を「無期・フルタイム・直接雇用(正規社員)」と位置づけ、政府にその実現を雇用政策の基本に据えることを義務付ける。
⇨その上で、個々人の選択による多様な働き方を確保しつつ、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に向けた施策を講じることを明記する。
⇨特に、これから社会に出る若者が、職業生活のスタートを正規社員として迎えることが出来るよう、「学卒全員正社員就職の実現」を目標に掲げ、①中学・高校・大学でのキャリア教育の推進、②実践的職業訓練と組み合わせた日本版デュアルシステムの導入と推進、③公共職業紹介制度等を通じた正社員就職の実現、④ブラック企業対策等、法令遵守の徹底等について国が具体的施策を講じるよう規定する。
2.ワークルール教育推進法(仮称)の制定
⇨労働法制や雇用形態の多様化・複雑化に伴って、様々な労働トラブルが発生し、かつブラック企業やブラックバイトなどの新たな問題が増加している中、労働者及び使用者双方が、労働関係法制度を中心とする労働関係諸制度についての正確な理解を深め、かつ適切な行動を行い得る能力を身につけることをめざし、「ワークルール教育推進法(仮称)」の制定をめざす。
3.ワークライフバランス確保法(仮称)の制定
⇨国民一人ひとりが、やり甲斐や充実感を感じながら働いて生活の安定を確保しつつ、それぞれのライフステージに応じて家庭や地域生活の中で多様な生き方が選択・実現できる社会を実現するため、ワークライフバランス(生活と仕事との調和)確保法(仮称)を制定する。
⇨具体的には、①就労による経済的自立の確保(特に地域別・産業別最低賃金の引き上げ、均等・均衡待遇の実現など)、②健康で豊かな生活のための時間の確保(特に、労働時間の上限規制や休息規制の導入など)、③個々のライフステージに応じた多様な働き方の選択肢の確保等が実現されるよう措置を講じる。
4.公契約基本法(仮称)の制定
⇨国・地方の厳しい財政状況を背景に、公契約の受注価格の低下が続き、結果として労働者の賃金・労働条件の著しい低下を招いている中、公契約の適正化を図り、ディーセントワークの促進を目指すため、公共事業・委託事業・指定管理者・物品調達などの公共調達(公契約)において、労働関係法令の遵守及び社会保険の全面適用などの条件を定める「公契約基本法(仮称)」の制定をめざす。
⇨その中で特に、非正規雇用労働者の正社員化の促進、待遇改善等に積極的に取り組んでいる優良企業からの調達を優先的に行うこととし、そのための第三者機関によるランク付けを検討する。
⇨また、公契約基本法(仮称)の検討に併せ、公務職場における非正規労働者の正規化や雇用の安定、処遇改善を図ることをめざし、いわゆる「官製ワーキングプア」問題の解消にむけた法制度の整備も検討する。
(以上)