5月28日(木)午前、参議院内閣委員会で「個人情報保護法改正案」及び「マイナンバー法改正案」に関する審議が行われ、私が民主党会派を代表して1時間、山口俊一IT政策担当大臣に対する質疑を行いました。参議院内閣委員会での質問は約2年ぶり。前回がまさにマイナンバー法案の審議でしたので、巡り合わせを感じますね。
さて、今回の質疑では、個人情報保護法改正案に絞って主に以下の項目について質問をしました。
1.この法案の目的(第1条関係)
まず、山口大臣に、「今回の個人情報保護法案改正は何のための改正なのか?」を問いました。現行法のどこが問題であり、改正法案でそれがどう解決されるのか、という点を質して、認識を合わせたかったのですね。
私自身は、今回の改正は、国民生活の向上を実現するための改正でなければならないと考えています。憲法が保障する国民の権利、特に幸福追求権や生存権などですね。その実現のために、守るべき個人情報の定義を明確化し、その保護を強化しながら、一方で個々人の利益のためにその活用を図れるようにルールを整えるわけです。また、特定の個人を特定できないように加工した「匿名加工情報」については、公共の福祉のため、安心で暮らしやすい社会を創造していくために積極的な活用を図れるようにする改正です。そのことについて、山口大臣からも「思いは全く同じである」という答弁を引き出しました。であれば、今後も、経済成長のためとか、企業のビジネスのためとか言わずに、まず一義的に国民のための改正であると訴えて欲しいと要請しておきました。
2.個人情報の定義について(第2条関係)
今回の改正で、保護されるべき個人情報の範囲は、拡大するのか縮小するのか、それとも変わらないのかを確認したかったのですが、具体的な規定については政令に委ねるということで、明確な答弁はありませんでした。
3.匿名加工情報について
今回、新たに「匿名加工情報」をこの改正案で規定することになった目的や個人情報との違い、定義、義務、基準等今回の法案の肝でもあるので、かなりの時間を割いていろいろと質問しました。
最も重要な点は、「個人情報」を匿名加工した場合、それが自動的に法律上定義された「匿名加工情報」になるのではないことを政府答弁で確認できたことだと思います。現在でも、自社内で個人情報を取り扱う場合、安全性の観点等から仮名化(匿名化)して使用するケースはあるわけです。そのような場合でも、今後は「匿名加工情報」となり、公表義務などが課されてしまうのかという懸念が強まっていたわけですね。今日の質疑で、事業者が「匿名加工情報」を作成することを意図せず、加工して利用する場合は、それはあくまで「個人情報」のままであり、「匿名加工情報」にはならないことが確認できたので、いかなる場合に「匿名加工情報」になるのか、公表義務が課されるのかが明らかになったことは収穫でした。
4.要配慮個人情報について
今回の改正では、個人情報の中でも特に配慮すべき個人情報を含んだものを「要配慮個人情報」と規定しています。これに関して、「要配慮個人情報」も適切に加工すれば「匿名加工情報」を作成できることを確認しました。また、加工の基準や方法について、一般的な個人情報と要配慮個人情報とでは違いがあるべきではないか、という点については、加工化によって要配慮情報も削除され、容易照合性が失われるはずなので、特に差を設ける必要はないと考える、とのことでした。この点は、個々の個人情報の特性に応じた加工化ルールを策定することが重要だ、ということですね。
5.利用目的の変更について(第15条関係)
最後に、個人情報の利用目的の変更について質問しました。今回の改正で、利用目的の変更がどのような範囲で可能化という点について、第15条第2項の規制を緩和したのですが、衆議院の審議で山口大臣は、この点について電力データの例をあげて、「電力会社が省エネを促すサービスのために集めた家庭の電力使用状況に関するデータが、例えば社内の研究開発や安否確認サービスにも使えるようになる」と答弁したのですが、本当にそこまでの拡大が可能なのか、それではあまりに利用目的の変更可能性が広がってしまうのではないか、と質しました。
山口大臣は、あらためて今回の改正の趣旨と、大臣自身の考えを繰り返し説明するに留まりました。私からは、電力データが安否確認にも使えるというのは、ユーザーの側から見れば勝手に家庭の状況を監視されるのではないかという懸念にも繋がるので、慎重に検討して整理して欲しいと要望しておきました。この点、個人情報保護についての信頼性を確保する上でも重要なところなので、今後もフォローしていきたいと思います。
以上、質疑の主なポイントでした。今日は他にも、EUとの関係や海外にある企業への個人情報の提供、個人情報保護委員会の体制等質問を準備していたのですが、またも時間が足りずに終わってしまいました。結局、政省令や個人情報保護委員会に委ねられた項目も多いので、今回の改正が国民生活の向上に資するものとなるよう、今後もしっかりこの問題をフォローしていきます。