10月30日(木)の参議院厚生労働委員会、50分の質問時間をいただいて、安倍政権、そして塩崎厚生労働大臣の労働行政に対する基本姿勢を質しました。今回は、いわゆる「一般質疑」というやつで、特定の法案についてのみの審議ではなく、広く厚生労働行政一般について政府の見解や対応方針、具体的な対応についての考え方などを問い質すことができるのです。
今、安倍政権の労働行政について問い質すべきことは山のようにあります。しかし50分という限られた時間なので、私は事前の準備で、以下の四点に絞ることにしました:
- 安倍総理の「法の支配」「国際法の遵守」発言と、ILO条約(国際労働基準)の批准・遵守促進について
- 労働者派遣法改悪案の問題点について(注:ここでは敢えて改正案ではなく改悪案と呼びます)
- 長時間労働の撲滅に向けた具体的取り組みについて
- 外国人技能実習制度の問題点と今後の対応について
いずれも大事な課題で、しっかり準備をしていたのですが・・・大変残念ながら、なんと、3番目のテーマにすら辿りつくことができなかったのです。なぜなら、2番目の労働者派遣法改悪案に関する質疑で、政府側、とりわけ塩崎厚生労働大臣が度々、答弁に窮し、かつ、政府参考人(法案担当部の部長)と大臣の答弁が違うということが二度にわたって発生したために、質疑が進まなくなってしまったからなのです。全くお粗末な答弁対応でした。
そしてこのことは、今国会で最大の対決法案となっている「労働者派遣法改悪案」について、担当である塩崎厚生労働大臣がその問題の本質を全く理解されていないこと、そして、全くいい加減な制度設計しかされていないことを露呈したことになります。ぜひ、参議院のインターネット審議中継で録画版をご覧になり、そのドタバタ振りをご確認下さい。
ここでは、以下、ごく簡単に主なやりとりについて報告しておきます。
①安倍総理の「法の支配」発言と国際労働基準の遵守について
安倍総理が盛んに「法の支配」「国際法の遵守」を国内外で訴えていることを受けて、労働分野での「国際法の遵守」、つまりILO条約の批准と履行促進、とりわけ、日本がまだ批准をしていない2つの中核条約、すなわち第105号(強制労働廃止条約)と第111号(差別禁止条約)の早期批准を強く求めましたが、国内法制との調整が必要との答弁を繰り返すばかりで、ほとんど関心のない様子。結局、「法の支配」の訴えもご都合主義に過ぎないということがよく分かりました。
②労働者派遣法改悪案の問題点について
まず、派遣法の今回の改正が、これまでの派遣労働の「一時的・臨時的」という原則を放棄するものではないかと質しましたが、塩崎大臣は「一時的、臨時的であるという位置づけは維持するが、派遣という働き方を望む労働者もいるわけで、そういう人たちがよりよい環境で働き続けられるようにするのが目的の一つだ」と答弁。つまり、派遣労働を永続的に続けることを可能にするのも目的と大臣自ら認めたことになります。
続いて、正社員化が目的なら、希望する労働者が正社員になれるよう、義務づけをすべきではないかという問いに対して、今回ははじめてキャリアアップをめざした教育訓練の提供義務などを義務付けたことを評価して欲しいとの答弁。ではその派遣労働者のキャリアアップを確実に保障する条文がどこにあるのか質しましたが、ちゃんとした答弁をできず、何も保障がないことを露呈してしまいました。つまり、政府は盛んに今回の法案で「キャリアアップが図られる」と宣伝していますが、法案上は何の担保もされていないことを認めたわけです。
さらに、その唯一、派遣元事業者に義務付けられる教育訓練機会の提供義務について、その義務は、派遣元事業者と派遣労働者との雇用契約期間中にのみ発生するのか、その場合、一体いつ、派遣元事業者は教育訓練を提供するのか、ごく基本的な制度設計について確認したのですが、ここで政府参考人と塩崎大臣との答弁が食い違い、審議がストップ。結局、何ら詳細な検討されていないことが判明しました。登録型派遣というのは、普段は登録だけしてあって、実際に派遣元と派遣先との派遣契約が発生しないと労働契約も発生しません。つまり、労働契約が有効な期間とうのはイコール派遣期間なのであって、その期間に派遣元が教育訓練を提供するなどということは考えられないのです。
そしてきわめつけは、常用型派遣と無期雇用の違いについて質問したときでした。常用型派遣といっても、実は有期雇用の反復更新契約が多いという実態を、塩崎大臣はまったくご存じなかったのでしょうね。なんと、今回の法案で、事業者がみんな許可制になるので、今後、常用型派遣は全員無期雇用になるという全く事実誤認の答弁を行ったために、審議が15分にわたって中断。結局、すったもんだの挙げ句、私の質問の時間がなくなってしまったということです。
それにしても、前回の有期雇用特措法案の質疑のときと全く同様に、用意した質問の半分もできないままに終わってしまいました。この程度の認識で、労働者の将来を左右するほどの重要法案を提出していることに本当に愕然としてしまいます。あらためて、派遣法改悪案の欠陥をさらに追及し、断固、今臨時国会での廃案に向けて徹底的に戦っていかなければならないと決意を新たにしました。引き続き、ご支援を宜しくお願いします!